福井家庭裁判所 昭和43年(少ハ)7号 決定 1968年12月10日
少年 M・Y(昭二四・二・一生)
主文
本件申請を棄却する。
理由
(1) 申請の理由
本件申請の理由の要旨は、「本人は、昭和四二年一二月二九日富山少年学院に入院し、翌四三年一一月一日付で一級上に進級したものであるが、意志薄弱性の精神病質傾向が強くまた物事にあき易く耽溺性の強い性格の持主で、加うるに、本人に対する保護者の関心が薄く出院後の方針も固まらない現状からみて、このまま本人を満齢到達(昭和四四年一月三一日)と共に退院させると、再非行の危険性も考えられるので、出院後の環境調整をはかる必要があり、本申請に及んだ。なお、本人は、前記のように既に一級上に進級しているので、他少年との均衡上、昭和四三年一一月仮退院を申請し、同年一二月更生保護委員の面接を経たうえ、翌四四年一月一〇日頃本人を仮退院させる予定でいる。」というにある。
(2) 当裁判所の判断
本人は、昭和四二年一二月二八日当庁において窃盗・道路交通法違反保護事件により中等少年院送致の決定をうけ、同月二九日以降富山少年学院に在院するものであるが、在院中の本人の処遇経過や少年学院側の本人に対する処遇意見等は、次にみるとおりである。すなわち、同学院長及び同学院分類保護課長の各陳述、並びに家庭裁判所調査官作成の調査報告書等を総合すると、本人は、昭和四二年四月一日二級上に、同年七月一日一級下に、同年一一月には一級上に、それぞれ順調に進級し、またその間一回の反則事故もなく、職業補導賞二回、努力賞四回、全般賞一回を受賞しており、院内の生活・作業態度も改善向上の一途をたどつてきたものであること、富山少年学院側でも、一致して在院中における本人の好成績を評価し、また、前記の仮退院予定日を目途に委員面接も本年一二月四日に終了していること、なお、少年学院側では、本人出院後における環境調整等を目的に本人を保護観察に付する必要性を認めていること、以上の諸事情が認められる。
以上に認定したような、本人の在院中の処遇成績並びに少年院側の処遇意見等に照らすと、本件申請が、犯罪性除去のための院内矯正教育を継続する期間を設ける必要からなされたものではなく、専ら、仮退院後の保護観察を目的としてなされたものであることが明らかである。
ところで、本人の帰住先など出院後における一定の諸事情を、本人の犯罪的傾向乃至犯罪性認定の一資料として考慮し、出院後の保護観察期間を見込んだうえ、収容継続の期間如何を決定することは許されるものと考えるが、本件のごとく、専ら出院後の保護観察期間の設定を目的としてなされる収容継続申請を認めることは、明らかに少年院法一一条の規定の文言や趣旨に反するものと解さざるをえないから、保護観察に付すべき実際上の必要性の如何に拘わりなく、かかる申請は許されないものと解すべきであり、従つて、本件申請は理由がないものと結論せざるをえない。
(3) 結論
以上の次第で、本件申請は理由がなく、棄却を免れない。
よつて、主文のとおり決定する。
(裁判官 久米喜三郎)